ストレリチアの栽培には様々な作業があります。その中でも、最大、最重要なのが株分け、植え替えだと思っています。他の、何の作業であれ、すべての事柄が、ここに集約されてくるからです。ぼんやり、眺めていれば、大して変わり映えのない作業にみえないこともありません。しかし、実は、様々な配慮が必要な仕事なのです。春から初夏へかけてが主なシーズンで、その季節は毎日のように植え替え作業に追われます。
用土の配合や鉢の準備などの基本的な事柄は問題になりません。いざ作業に掛かると、次々に難しい判断に迫られます。鉢を抜かなければ仕事にならないのですが、どうしても抜けない鉢が一年に一度ぐらいは現われます。あの手、この手を尽くしても、どうにもならず、鉢を割らなければならない羽目になることも、珍しいことではありません。株分けするなら、どこへ切れ目を入れるか、どの大きさの鉢へ入れるか、それに見合った根の長さは、深さは、2,3年後の出来上がりの想定しての位置、など、など、仕事人の技量、すべてが注ぎ込まれるのです。結果としての出来映えは、素人と専門家の違いは歴然です。
その、私の姿に対して、訪れる人々の態度は二つに別れます。
「ああ、植え替えね、私もやっているから、今更、見なくたって良いよ」と、軽く,浅く受け取る人もいれば、「是非とも見たい。どんな秘密があるか知らなければ」と言う人も居ます。私にしてみれば、そんなに難しいことをやっているつもりはありませんが、この作業を決して甘く考えてはいないのです。
