ストレリチア秘話No.70 植物と環境への適応 その2

 前にも書きました。「生物は、生まれ、育った環境と一体、いや、環境、そのものである」と。だから、プロテアは、違った環境では生きられなかった、のです。でも、「ストレリチアは平気で生きているではないか」の疑問が生まれてきます。答えは、「ストレリチアは、幅広い環境適応能力があった」からです。私は、これには感謝せずにいられません。

 ここで、もう一つ、頑固に、生まれ、育った環境にしがみついている植物について話しましょう。ケープタウンのキルシュテンボッシュ植物園を訪れた時のことでした。北ケープ州産の多肉植物のハウスへ入って驚きました。温室の中に、また、小さな温室が作られていて、その中に植物が植えられているのです。寒さに弱い植物ではありませせんから、不思議に思って係に尋ねました。

「外気の湿度を遮断しているのです。」と。

 私にすればケープタウンは十分な乾燥地帯で空気は乾いているのに、なのです。でも、北ケープは砂漠で、極端な乾燥地域で、ここの植物は気難しい、とのことでした。帰国してから

平尾秀一先生に伺うと、

「あそこの植物は、鉢から抜いて、空中にぶら下げて置いても、日本の夏の湿り気の中で、溺れてしまうんです」と。水もないのに、湿り気だけでおぼれてしまうなんて、と驚きました。生まれ、育った環境とそっくり同じでなければ生きられない、適応の幅の狭い植物もあるのです。

 話は飛びますが、人類が故郷のアフリカを出て、世界中に広まることが出来たのは、この優れた適応能力にあったのではないでしょうか。