ストレリチア秘話No.497 これがストレリチアの剪定(せんてい)です。

 白然の掟から離れたストレリチアは、野放図な生長に走るから、何らかの規制が必要ではないか、というのが前章でした。そこで代わりに取り得る技術の一つが剪定です。ストレリチアには枝がありませんから、整理して切り落とすのは、葉、葉柄しかありません。タダ、心得ておかなければならないのは、余分な生長を押さえるのですから、少々の無理は仕方ないことです。

ストレリチアの葉の数え方の順序は、中心の新芽から数え始めるのが便利です。ストレリチアの花は前年の葉から出ます。これより内側の新しい葉は来年の花が出るのですから切るわけにはいきません。つまり、境目は、花の出た葉で、それより外側の古い葉を切り捨てることになります。株の状態によって違いがありますが、一条あたり、片側2枚ずつ計4枚残すのが最低限の切り方です。花がついていれば見やすいのですが、例え、花がなくても葉の枚数で数えればよいのです。

 この作業は一年中、いつでも、気がついたらやればいいのですが、面倒な場合は花を切る時に、まとめてやっても構いません。私が花を抜くのをいやがるのは、この剪定をやらずに済ませて繁り放題にしてしまうことにもあるのです。私は以前、ロサンゼルス郊外のストレリチア栽培場で、メキシコからの労働者数人が包丁を使って、いっせいに古い葉を整理している場面に出会ったことがありました。切り取られた圃場が、いかにもすっきりとした気分であったことを思い出します。

このように剪定を繰り返していれば、いつも、スッキリした姿のストレリチアに相対することが出来ます。例えてみれば、床屋さんや美容院へ行ってて髪をサッパリと理してもらうことに似ています。不精者が、周囲に不快な印象を与えるのは、人もストレチアも変わりはありません。このようにしていれば、通風も日照も十分で、それが花に良い影響を与えてくれます。

 その上、この剪定作業は、副次的効果も、もたらしてくれます。それは虫防除にも役立つことです。一番、困るカイガラ虫の排除に役立ちます。この虫は古い葉に多く残ります。

 新しい葉に発生するまでには時間が掛かるからです。その葉を切り捨てることが出来るのです。一挙両得ですから、こんな有り難いことはありません。なお、この虫は成虫になると足を失うので、捨てて放置しても何の被害もありません。