ストレリチア秘話No.575 ストレリチアは働いてくれるか?

 今回は珍しく商業的な小話です。或る人が私に質問してきました。

 「私は少しストレリチアを集めました。いつになったらお金になるでしょうか?」と。言葉には出さなくても、似たような想いを抱く人は、他にもいることでしょう。私は、しかたなく答えました。

 「あなたはストレリチア栽培を始めて、まだ日が浅く、腕は半人前にも達していない。持っているストレリチアだって、大した物は無い。それなのに、お金、云々は10年早い。お金を稼ぐのは、あなたではなく、ストレリチアなんです。ストレリチアを立派に育て上げれば、働いてくれるのです。しかも、それは誰でもが欲しいと思うストレリチアでなければなりません。技術だって、人並み以上でなければならないでしょう。そこまでやる気があれば、今の質問は無駄になりません」

 趣味を職業にしようとする人が出てくるには、どの分野でもあり、珍しいことではありませんが、しかし、それが、いかに難しいことであるかは案外、知られていません。買う側、サービス受ける側からみれば、楽にやれるように見えるからかも知れません。一人前になるのは、実は大変なことなのです。ストレリチアの場合は特にそうだといえるでしょう。

原因は色々あります。

  1. 需要が少ないことです。これは決定的です。厳しい世界であることを知らなければなりません。
  2. 研修のルートが確立されていないことです。整った教育機関がないために、自分のレベルを客観的に知ることなく、参入してしまうのです。簡単に言えば。素人でも参入出来るのです。こうなると、玉石混交ですから、お客さんが見分けることになります。
  3. ストレリチアは発展途上の植物です。変化が激しく、新しい品種が次々に登場してきます。情報入手のルートを確保しない限り、気がつけば「つんぼ桟敷」に置かれています。時代の先端に立たなければならない立場なのに、お客さんより遅れている。これでは、もう、見込みありません。
  4. お山の大将はピエロなんです。私は古い人間ですから、「持つべきは師なり」の考え方が捨てられません。いや、最先端だからこそ必要なのです。ひとりよがりの自慢など、脇から見ればピエロに過ぎません。昔風の「師」でなくてもよいのです。自分を導いてくれるなら、皆、「師」です。「目から鱗が落ちる」ほどの思いがさせてもらえるなら、ストレリチアの最先端の開拓は可能になるでしょう。
  5. お客さんの要望は限りなく上がる。手持ちのストレリチアが売れました。喜んだのは束の間。実は、それで、買い手のレベルが上がって売り手とイコールになってしまったのです。次は、売り手が一段高いレべルを用意しなければ、今までと同じ関係は保てません。これを次々に乗り越えてゆかなければならないのです。趣味だった時は気楽でした。自分の好みを優先していればよかったのに、こんどは客観的規準の場に立たされてしまうのです。社会全体の流れからみれば当然のことなのですが、果たして、これに耐えられるでしょうか?