ストレリチア秘話No.579 揺れ動くストレリチアの評価

 私が毎日、会いに行くストレリチアの中に二株のジャンセアがあり、その評価が日によって変わるので困っていました。それは、ジャンセア ユイテンハーグの交配から生まれた株です。ところが、この親は遺伝の力が弱いらしく、自分に似た子供は、1000本の内、わずか2本しか出ませんでした。

遺伝のことですから、親には似ていていても、そっくりではないものの、濃い赤色の苞です。それでも首が伸びないのは親に似ています。ラベルを見ると★★★★星です。これは昨年、開花したときの評価です。この蕾が苞となり、色づき始めてから1ヶ月以上、日によって、これは★★★★★星に昇格させるべきではないか、いや、★★★★星のままでよい、と私の評価が揺れ続けてきたのです。これは価格にも影響するのです。少なくとも1万円の開きが出るでしょう。

 私の仕事の一つにストレリチアの価値を決める評価があります。しかし、ストレリチアの世界は組織化されていませんから、私のすることは私設に違いありません。それでも結果は社会に通用していきますから責任は重大です。私情を挟まず、公平でなければならないことは承知で、だからこそ、慎重なのです。

 評価には相対評価と絶対評価の二つがありますが、ストレリチアの場合、どちらに偏るわけにはいきません。結局、総合的評価に落ち着きます。これがまた、あいまいな部分が多いのです。どの分野を重視するかによって評価が変わってしまうのですから。数量化出来れば問題ないでしょうが、それは不可能です。

 それでも実務である以上、決定を下さなければなりません。私は決めました。晴れて、「★★★★★星ジャンセアの誕生」です。絶対評価では★★★★星でも、この苞の色は、ストレリチア全体の中では独特、ユニークである点を重視したのです。

 こんな出来事は一年に一,二度起きます。それも格下げなどはなく、格上げばかりです。

 株に力がついてきて花が良くなることもありますが、評価する側の目が変わることも多いのです。

※このあいだ問い合わせのあったお客さん、残念でした。このジャンセアは、昨日までだったら安く手に入ったでしょうに、今日からは、もう、「スター」に昇格して、簡単には手の届かない存在になってしまいました。ストレリチア入手に、お金は第一条件ではないようです。