アフリカ大陸が、まだ、温暖、湿潤だった悠久の太古の時代に誕生したストレリチアは、大柄で、湿った環境を好む、現在の大型種に近い姿をしていたものと思われます。その後、やってきた乾燥化の時代になると、一部は乾燥に耐えるよう小型化して現在の無茎種の進化し、残った大型種は、少しは乾きに適応しようとしたものの、不十分なまま、湿り気の残る地域に生き続けてきた有茎種の二通りに分れたものと思われます。
現在の分類では、共に、ストレリチア科、ストレリチア属に属してはいるものの、分れてからの年月が余りにも隔たり過ぎたために、染色体にも変化が生じ、お互いに交配が成立しなくなってしまいました。同じストレリチア属であっても、それだけ距離が離れてしまったのです。
DNAの変化は我々の肉眼では識別できませんが、地上部の大小の差は明白です。しかし、地下に隠れている根にこそ、両種の生き方の違いが現われているのです。無茎種、小型種が乾燥に耐えるように姿を変えたのは、地上部は僅かで、根本的な違いは根にありました。
アフリカでの自生地調査第3回では、アフリカ大陸は60年から80年に一度はやってくる大干ばつに見舞われていて、2年間、雨が一滴も降らない状況で、大抵の草は枯れて見るも無惨な風景となっていました。それでもストレリチアは何とか生き長らえていて、その時、やっと、私は納得したのです。
ストレリチアの根茎は太くて水を貯めています。ところが、その長さは常識を越えているだけでなく、まだまだと無限に拡がろうとしているのか、とさえ思えるほどなのです。
初めの頃は、なぜ、こんなに必要を越えてまでするのか疑問を持っていたのです。
この傾向は、最先端に進化したジャンセアにも強く受け継がれています。いや、ますます、強化されている、といってもよいほどです。2年も雨が降らなければ、私たちの地域は悲惨な状況となるでしょう。これは砂漠とおなじ状況なのですから。でも、ストレリチアは、それを想定して準備が出来ているのです。ことによると、もっと、ひどい状況まで耐えようとしているのかも知れません。
私は、このストレリチアの用意周到さに頭が下がるばかりです。