「光り、輝く色彩の花」
この言葉は、欧米の園芸書やカタログによく出ていて、私は、英語特有の大げさな表現だと思っていました。花といえば、みな、輝く美しさを持っていて当たり前ではないか、との感覚からです。ところが2年前、ジャンセアゴールドの3代目の実生株の初花の一つに、今まで見たことのない、輝く色彩のストレリチアの花が出て、ビックリ仰天してしまったのです。何と、実際に、しかもストレリチアに現われたのです。私は今まで、10万本近いストレリチアの花を見てきましたが、これは初めて出会った経験なのです。「光り、輝く」とは、決して大げさな表現では無かったことを知りました。
早速、これは、いったい、どんな現象であるのか調べました。花の断面を顕微鏡で見ますと、まず、最初は上面の表皮で、ここには色素が多く含まれています。次が、これも一層の柵状組織が支えています。その下が、厚い海綿状の組織で空胞が多いのが特徴で、最期が下面の表皮となっています。外から入ってきたきた光は、この組織内で乱反射して外に出た光が我々の目に映る仕組みになっているようです。この光り、輝くストレリチアの花の個体は、この組織の構造が特別で、光の反射が優れた構造になっているのだろうと思われます。
この構造が遺伝で伝えられるかどうかは、やってみなければ分りません。まだ、次の花が咲いてこないので、構想の段階でしかありませんが、交配、育種に取り組んでみたいと思っています。仮に成功するとすれば20年以上もかかることでしょう。改良すべき点が、まだ、ほかにもあるからです。
それにしても、私たちの孫や曾孫は、今の時代の人たちが見たことのない、鮮やかな輝きのストレリチアの花を手にすることになるでしょう。中には、そんな派手な花はいらない、昔風で十分だ、という人も居るかも知れませんが、少なくとも、選択肢が拡がることは悪いことではないでしょう。
この章の読者は、何とも、もどかしい気分になるかもしれません、この花を見たのはわたし一人しかいませんし、また、次は、いつになるか分りません。私だって待ち焦がれているのです。確かなことは、「これは物語ではなく、現在、進行中」であることです。