私の所へは毎年、大勢のストレリチアのお客さんが訪れます。その中には意外に思うほどストレリチアを種子から育てている人が多いのに驚かされることがあります。実は私も仕事の中で多いことがらなので、それを、あまりにも簡単にやってのけていることに気がつき、呆れることがあるのです。
植物を栽培にするに当たり、種子から育てるのは珍しいことではありません。でも、それは草花や木なら兎も角、事がストレリチアとあっては簡単なことと済まされなくなってくるのです。ストレリチアには、それなりの事情があるからなのです。
その一つ、ストレリチアには古くからの種が多く、殖やしても意味のないものが多いことがあるのです。良い品種なら兎も角、期待出来ない品では、無駄なことをしてしまうことになりかねません。つまり、ストレリチアを実生から育てるのは、良い品種を育てることでなくてはならないのです。これは簡単なことではありません。親株には良い子供を産ませることが出来る優秀品種を選ばなければならないからです。これには多額の経費が掛かります。
しかも種子を採るには二株必要となるのです。つまり、本格的な作業となってしまうのです。その上に年数がかかります。育苗後、開花まで、レギーネで数年、ジャンセアでは10年近くも掛かってしまいます。
優秀品種を選ぶのも簡単ではありません。どんな目的の苗を望むかによっても親株が違ってくるのです。つまり、大がかりな作業になってしまいます。私の所へ勉強に来て本格的な育種に掛かった人も居ますが、それでも、未だ種子が出来た段階です。本格的に結果が判明してくるのは10年、20年先のことになるでしょう。ストレリチアの育種を手がけるのは大変なことなのです。結果として新品種の育成には、それなりの経費がかかることになってしまいますが、これはしかたないことです。しかも必ずしも保証されてはいないのです。それなのにやらずにいられないのは、それだけの意欲を持った人だけに限られてしまうからでしょう。
