世の中、古いものも残っていれば、最新のものも同居しています。でも、大抵の物は一目、見ただけで新、旧の差が分ります。ところが、中には専門家でないと判別できないものもあるのです。ストレリチアの品種もその一つなのです。私の圃場は大部分が新品種に占められていますが、中に3種だけ、何百年も前からの南アフリカ産、原種が混じっています。見ただけでは誰も区別することは出来ません。新しいとか、古いとかいっても、それは植物体内の遺伝子のことであって、ストレリチアの場合、その違いがハッキリとした形で外に表われることはないからです。
だからストレリチアは古い品種でよいのだと簡単にかたずけようとするのではありません。ただ、外見上に違いがない、といっているだけなのです。昔からの古い系統には、それなりの良さが残っていますが、すべてがいいはずがありません。欠点も多く持っていますから、やはり、選抜された優秀株に敵わないのです。
それでも、原種を大切に保存しなければならない理由があります。それは昔からの貴重な遺伝子を伝えていることです。新しい交配種は優れた遺伝を獲得するため、同時に古くからの遺伝子を捨てています。一度、失われた遺伝子は二度と取り返すことは出来ません。人類の大切な資産を維持するには、どうしても原種を残しておかなければならないのです。
交配時に捨てられた遺伝は何であったかは、その時には分らず、後になってから判明するのですが、もう、間に合いません。交配種は人工的に、また作れますが、原種は自然が生み出したものですから、人間にはつくれないのです。原種の優秀品種は特に大切に扱わなければならないと思っています。耐病性、耐候性を始め、ストレリチアらしさを構成している遺伝は様々ですが、失ってはいけないものが多いのです。1番、責任があるのは私の状態ような育種家ですが、保存については愛好家の協力が必要です。
