ストレリチア秘話No.285 ストレリチアにも引き立て役は必要か

 育種を仕事とする私の所では毎年、新顔が出てくる度に優秀花が選抜され、評価の低いものは捨てられます。毎年のことなので当たり前のこととして神経が麻痺しているのですが、一度、立ち止まってみることにしました。

 私がストレリチアを手がけ始めたころは、ストレリチアであればなんでもよく、良い、悪いなどと区別することは思いも寄らないことでした。今だって初心者は似たようなものではないでしょうか。それでも、だんだん慣れてくるに従い、目が肥えてきて、今では「最高品質の花でなければ気が済まない」などと思い上がっている始末です。

 でも考えてみると、平凡な花が数多くあるからこそ、優れた花が目立つのであって、全部が優れていれば、みな同じレベルなのだから、それが普通となってしまうでしょう。やはり、引き立て役があればこそ、優秀品種の存在があるのです。

だからといって、いつまでも進歩もなく止まっているわけではありません。少しずつながらレベルは上がっているのです。つまり、昨日の優秀品が、もう、今日になると普通品に下げられ、引き立て役にされてしまうことだって起きかねません。世の中は何とも厳しいことでしょう。