ストレリチア秘話No.286 あなたはパイオニア、いや、スカウトになり得るか?

 これは私が開発に携わっているからこそのことです。 時々、新製品や新しい流行の発表があり、あたかも突然、 現われたかのように受け止められますが、 実は、開発は何年も前からであり、 プロトタイプ(原型) は更に前から出来ていて、 発表されたのが 「今」ということなのです。

 ストレリチアの新品種も同じことです。 レギーネの名品種 「マンデラス ゴールド」 の経過を振り返ってみましょう。 第一回南アフリカ調査で、私が訪れたケープタウンのキルシュテンボッシュ植物園では、「マンデラス ゴールド」 を始め、ストレリチアの黄色種は、奥の研究園に、人目にふれることなく、ひっそりと、 まだ、 植えて間がない状態でした。20年後に再度、訪れた時には、園内の各所に見ることが出来るほど殖やされていましたが、まだ、それほど大切に扱われている様子はありませんでした。 命名されたのは、その後のことで、現在では、 南アフリカを代表する名花としてもてはやされています。

 ところで、私の栽培場でも、新品種としてデビューする資格を匂わせているストレリチアが 2, 3, 並んでいます。 でも、それを今、目にしているのは、私を含めて 3,4人だけ、というところでしょうか。 脚光を浴びる前に価値を知ることこそ、 パイオニアの資格です。

 私には、そのチャンスがなかった、という人もいるでしょう。 でも、私の所にも大勢のお客さんが訪れますから、 その花に接する機会はないとはいえません。 でも、例え、それが目の前にあっても、見る人の目のレベルが低かったり、 意欲もないのでしたら、 「心、そこにあらざれば、 見れども、 見えず」なのです。スターになってしまえば、 誰でもがもてはやします。 しかし、 背後には、その素質を誰よりも早く見抜いて、引き上げてくれたスカウトの存在があるのを忘れてはいけません。