ストレリチア秘話No.299 ストレリチア栽培 最上級者 名品との出会いの醍醐味

 美術品の本物が、なぜ尊ばれるのでしょうか?それは、本物だけが持つ、作者の気迫が伝わってくるからです。残念ながら、偽物は、どんなに上手に作られていても、これがありません。

 ストレリチア愛好家には、品質は兎も角、長い間、慣れ、親しんだ株に愛着を持つ人は多いと思います。それは、それでいいのです。しかし、奥の奥まで進んだ上級者となると、もっと深いところまで求めたくなてくるのです。

 私の好きなストレリチアに「ジャンセア ユイテンハーグ」があります。多くの点で、これぞ、ジャンセアともいうべき形質を備えていて、見る人を満足させてくれるのです。特に開花が近くと、蕾の先端が赤く色づいてきて、綺麗な花が咲くぞ、と期待を持たせてくれることです。だからといって、完全無欠ではありません。開花が十分に進んだ頃、欲を言えば、首の辺りが、もっと赤ければなあ、との不満が残ります。生き物として、長所があれば、欠点もあるのが当然なのですが、人の欲にはキリがありません。この欠点さえ無ければ、と交配を繰り返してきたのですが、どうして、どうして頑固で、なかなか思うようには受け付けてくれません。まだ、あきらめきれず続けてはいますが。こうなると、上級者どころかマニアの領域です。

 ストレリチア愛好家も上級になればなるほど、ストレリチアの神秘を深く探ろうとします。結果として、それを表わしてくれる優秀花を追い求める事になってくるのです。高価であっても、多少の犠牲も何のその、無理をしてでも手に入れたくなるのは、こんな事情が背後に控えているからなのです。