ストレリチア秘話No.313 ストレリチアはあなたの代理人です

 私は今、圃場のストレリチアの集団をみて、改めて、愕然ととした気分になっています。

 私は大勢の人々の好みに応えなければならないので、自分、個人の嗜好は抑えなければ、と客観的基準を目指してきたつもりでした。ところが、今、冷静な目で見れば、私好みの集団になっているのではないか、と思えてならないのです。

 私がストレリチア栽培を始めた頃は、私にはストレリチアを選ぶ技術も裁量も無く、手に入ったものを、そのまま、受け入れるしかありませんでした。その後、本格的な栽培に移行するにつれ、取捨選択が行われ、水準の向上が計られるようになりましたが、それでも現状を追認するだけでした。大きな方向転換が起きたのは育種を始めたことにありました。

 育種は無目的に行うものではありません。当事者が抱く理想の実現を目指すのです。ここから、否応なしに「私らしさ」の方向に進み始めました。それが現在も続行中です。そこでは常時、選抜、陶汰が行われ、望ましいものが残され、不適なものは処分されて消え去ります。

 これが10年、20年と繰り返されてきたのですから、私の圃場のストレリチアが、私好みの集合になってしまったのは当然のことです。だからといって、ストレリチアが偏り無く客観的基準で集められている所などありません、この私の所でさえ偏向は避けられなかったということです。

 趣味栽培であっても似たようなものです。持ち主の裁量によって選ばれたものが集まってくるのです。否応なく、その基準がストレリチアに現われてきます。周囲から見れば一目瞭然です。「知らぬは、当人ばかりなり」では困ります。手持ちのストレリチアが、あなたの代理として評価されることもあることを知らなければなりません。

私の所では、私の代理人である以上は厳しい審査を課しています。これに耐えられなかったものは捨てられます。但し、代理人は一人や二人では無く、大勢いますから、全部が同じ扱いではありません。ピンからキリといいますが、キリは捨てられても、残されたピンにも段々があるということです。