ストレリチア秘話No.364 人とストレリチアの出会い

もう3年も前のことでしょうか、冬の開花シーズンに一組の若い夫婦が訪れてきました。

 「今、持っているストレリチアが、何年たっても花が出ないので困っています」というので、私は園内を見渡したところ、足下に、小さな、可愛い矮性種が花を2本付けているのを見つけました。私は、自分が気に入ったのを見つけると、もう、他には目が回りません。これこそ、お客さんの要望にピッタリと選び出しました。お客さんも、「こんな花立ちのいいものは初めて見る」と喜んで帰って行きました。

 ところが、それっきり二度と姿を見せないのです。

 「あんなにいいものを手に入れたんだから、そろそろ、次が欲しくなる頃だろう」と思ったのですが、そうはなりませんでした。

 そこで私は気がついたのです。「そうだ、あれは矮性種だったのだ」と。矮性種は一度、花を咲かせると養分を消耗してしまい、次は2~3年、休んでしまうのです。このために矮性種を持つには多くのゆとりが必要なのです。それなのに、あの若夫婦には、それほどのゆとりがあるとは思えないのです。つまり、私は、いくらいいものではあるとはいえ、釣り合いの取れないものを勧めてしまったのに気がついたのです。私としては、高度な矮性種ではなく、レベルは低くても、毎年、間違いなく花を出してくれるレギーネを選んであげるべきだったのです。

 ストレリチアのレベルを云々するだけでは不十分なのです。その人の境遇にピッタリ合わせることが大事だと思いしらされました。