ストレリチア秘話No.410 赤黒い苞のストレリチア

 ずっと前、「黒いバラ、黒バラ」が現われて話題になったことがありました。花の世界では色彩の濃さを追い求める傾向が一部にあります。栽培量の多いバラでは特に望まれていたようです。暗黒に近い色に妖しい美しさを感じるからでしょう。それが最近、私の所のストレリチアゴールドクレストの中に一株だけ、赤黒い色のの個体が現われたのです。普通の赤い花とはひときわ、目立つのです。

 黒いと言えるほど黒くはありませんが、赤というほど鮮やかでは無く、「赤黒い」のです。花の色素についてしらべてみますと、黒い素というものはなく、赤い色素が多く集まり、細胞が密になり、光りの反射がさえぎられた結果、黒っぽく見えることが分かりました。これで分かったのは、黒い花ではなく、赤い花の延長であったことです。

 希少品扱いをしているわけではありませんが、まだ、一株も外に出していません。存在が知られていないのですから欲しがる人もいないわけです。何しろ、開花の季節に直接、訪れなければ実物を見ることが出来ないのですから。開花は10月下旬から12月です。

 美しい、という表現は適当では無いかもしれません。花の色の表現は絵の具の色、そのものとは少々違い、もっと複雑です。他に表現の仕方がないので色の名前を使っているのです。ここのところを誤解しないで頂きたいものです。

 それにしても、この品種の色が珍しいことは確かです。花の色、といっても様々で、ストレリチアには個体差があり、それぞれに個性がありますから、それを選ぶのが楽しみの一つです。ただし、どこでも選ぶ事が出来るわけでは無く、やれる場所が限定されることが難点です。