ストレリチア秘話No.511 ストレリチアの名花が生まれるまで

 交配、育種に関わるのは特殊な人だけですが、一般の人々も、自分の持っているストレリチアの来歴を知っておくことは必要です。優秀花が生まれる道は二つあります。一つは原種の中から選抜されたもので、「マンデラスゴールド」を始め、いくつかあります。でも、もう、これ以上は出ることは無いでしょう。原種の数には限りがあるからです。二つ目は人工交配によるものです。これは数多く、しかも、これからも続々と現われてくるでしょう。交配には、いろいろありますが、

1,優秀花✖️優秀花

 これは、双方の優れた遺伝形質を合わせ持つことを期待しての方法で一番多く、行われています。でも、トランプのカードゲームと同じ、カードの枚数が決まっていますから、一枚入れるには、他の一枚を出して交換することになります。そこでまた、難しい問題があります。いくら優秀な札を加えようとしても、それは人が勝手に考えたことであって、植物のほうは自分の都合で動きますから、そうなる保証はありません。悪い札が入ってしまうことは、いくらでも起こり得るのです。また、捨てる方の札にだって、捨ててはいけない優秀な札が入ってしまうことだって起きます。最終的には、やってみなければ分からないことなのです。

 それに、優秀花といえども、自分の優れた形質を伝える遺伝の力の弱いものもあります。優秀花=優秀親とは、必ずしも言えないのです。これも見た目では分からず、実際に試してみなければならないのです。

 このように、すべて希望ばかりにはなりませんが、まあ、他の方法よりは確率が高いので使われています。

2,普通花✕優秀花

 これは交配の親株が少ないとき、しかたなく使われます。算術計算でも確率は半分です。

3,普通花✕普通花

 これは知識のない人たちが面白半分にすることが多いようです。だからといって、可能性がゼロでもありません。表にあらわれた遺伝形質が表現型では、普通レベルであっても、陰にかくれた遺伝型(劣性)に優れた形質が潜んでいることもあるからです。

 これが表に現われれば優秀花となりますが、期待するには確率が低すぎます。

 このようにして名花が誕生してくるのですが、幸か、不幸か、ストレリチアは簡単に増やすことが出来ません。挿し木が出来なければ、茎頂培養も有効ではないのです。

 しかたなく、時間を掛けて株分けが出来るのを待つしかありません。でも、考えようには、これこそ、ストレリチアの有利な点なのです。安心して、ゆっくり構えていられます。しかも、長生きはストレリチアのお家芸ですから。