箸にも棒にもかからない強情なストレリチアもあります。日に当てても、肥料に気を配ってやっても、頑として、何年たっても花を咲かせてくれません。
「俺は、自分の生きたいようにしているんだ。お前さんの思うようになってたまるかい」といわんばかりの頑固さです。仕方なくゴミ捨て場にお引き取り願い、消えてもらうことにしました。
そこへ、一人のお婆さんがやってきて、
「そのストレリチア、私が引き取りましょう。咲かせて見せようストレリチア」「おやめなさい。お婆さん。そのストレリチアの強情さは生まれつきなんですよ。いくら、あんたが可愛がっても、いうことなんか聞くもんですか。私としては、こんなのを世の中にだして、迷惑を広めてもらいたくないんですよ。ストレリチアって、こんなものかと思われては困るんです」
と、お引き取り願うことにしました。ストレリチアは値段が高くて、なかなか手に入れられないのに、タダで手に入るとは、との思いもあったのでしょうが、愛情が、そのまま、ストレリチアに伝わることはありません。人と植物のコミュニケーションには大きな溝があるのです。このお婆さんのように、お伽話を簡単に現実化しようとは無理なことなのです。
これは実際にあったことですが、似たような話は、どこでもあることでしょう。
でも、そんなことは些細なことで、私のところはストレリチアの花嫁養成所なのです。お客さんが喜んで引き取り、可愛がってもらえるストレリチアを育てるのが本業です。そこで、姿も花も美しく、しかも数多く咲かせて満足してもらえる株を作出しなければなりません。
それこそが親心だと思うからです。