私のストレリチア品種改良の目標の一つに「苞を、もっと紅く、鮮やかに」があります。
いったい、なぜ、こんなにも紅い色にこだわるのでしょうか。ただ、単に私だけの好みがさせているのか?それとも、まだ、ほかに隠された事情があるのでしょうか。
もし、苞の色が、これ以上、鮮やかな紅色になるのをストレリチアが望んでいないのなら、それは、私自身の勝手な操作であり、ストレリチアを無理矢理、従わせていることになり、結果も、思う通りには進まないことになります。これは重大問題ですから、突き止めておかなくてはなりません。
もし、それがストレリチアも望んでいることでしたら、明るい希望が持てます。私の立場が変わるのです。無理矢理、引っ張るのでは無く、ストレリチアが進む方向へと手助けすることになるからです。ストレリチアに直接、質問することは出来ませんから、自然の様子を観察して、その道筋を押し計るしかないでしょう。
ストレリチアにとって最大の仕事は、自身の生存と子孫の繁栄です。この二つの内の一つ、子供(種子)を育てるにはサンバードの助けが必要です。それには、来てもらうための戦略が大切となります。食料となる蜜を用意しても、来てもらわないことには始まりません。鳥は花の匂いではなく、形と色に惹かれます。ストレリチアは花の形を鳥に似せました。次は色です。
サンバードは、どんな色を好むでしょうか。私は、鳥の羽毛の色に着目しました。メスは濃いウグイス色で地味ですが、オスは目にも鮮やかな彩に彩られています。背中から羽まで勿論、頭も瑠璃色(緑がかった青紫)に輝き、その上、なんと胸一面が紅く彩られています。このことから推し量れば、サンバードが自分たちの体の色と同じものに惹かれない、ということがありましょうか。ストレリチアが花を、このサンバードの羽毛の色に近づけようと努力するのに何の不思議もないでしょう。
私にはサンバードの胸の赤色が、ストレリチアのの色に重なっているように思えてならないのです。これで、私の胸のつかえは解消しました。