ストレリチア秘話No.532 隠れた可能性を秘めたストレリチア原種

 私の仕事は今までになかった、新しい性能のストレリチアを生み出すことにあります。その私が、原種のストレリチア(優良系でなければなりません)が好きで、敬意まで抱いているのは逆説的なことのように見えます。ところが、そうではないのです。交配種も、原種も、両方が好きなのです。原種には原種の、交配種には、交配種の役割があって、存在の目的が違うから、ともいえましょう。

交配種は、優れた遺伝形質を引き出す改良操作の結果、生まれます。でも、この世の中、良いことばかり起きるわけではありません。捨ててはいけないものまで出て行ってしまうことが起きやすいのです。でも、これはどうこう出来ることではありません。

 それに引き換え、原種は、遺伝子原のプールみたいなものです。或いは、「打ち出の小槌」のような、といったら誤解があるかも知れませんが、自分自身は後に控えて、子孫を生みだす側にある、といったらどうでしょうか。交配種が、或る特徴を失ってしまっても、原種は持ち続けているのです。しかも、これは大切なことですが、遺伝子原のプールの中には、まだ、発見されていない、利用されていない未知の遺伝があることまでが期待出来るのです。

 それが、いつ必要になるか分りませんから、それまで保持しておかなければなりません。自然の奥深さを軽視するわけにはいかないのです。

 私は原種の遺伝の中には、まだ私たちが知らない秘密が数多く隠されていると思っています。私たちは、この自然の配慮が存在することを忘れてはならないのです。

ゴールドA