ジャンセアの自生地、ブラックヒルを訪れた時のことでした。地主のドウフリング氏の邸宅の庭では、ジャンセアのまとまった数の栽培がされていました。私は珍しいことだと感じたのです。いくらストレリチアの自生地とはいえ、ストレリチはどこにもありますから大量の栽培は少ないのです。
邸宅の前の道路には、店とは呼べないような小屋があって数個のバケツにはジャンセアの切り花が売られていたのです。黒人のおばちゃんが店員でした。この道路は田舎道で幹線ではありませんから交通量は少ないので大して売れるとは思えないのにです。
でも、販売しているからには少しは売れているのでしょう。
私が驚いたのは、ストレリチアの花束の強烈な印象でした。ジャンセア独特の濃い緑と赤の色彩が濃く出ているのです。今まで見てきたレギーネの花の集団とは、随分、感じが違います。私が知っていたのは1、2本の孤立したジャンセアの花であって、このような10本束にまとまると強烈な感じを発揮するすることを知らなかったのです。
1対10は、それほどの違いがあることを知らされました。切り花として使うにも、1、2本と、まとまった量とでは、大きな違いがあるのです。私は、この時、レギーネとジャンセアの個性の差を、はっきりと感じました。
売店では大して売れてはいないようでしたが、困っている様子は見えません。私を案内してくれるオジャース氏の運転するサニーをベンツが何台も追い越してゆきます。
「百姓連中には敵わねえなあ、おれはサニーしか乗れないんだから」と、つぶやいていました。
