ストレリチア秘話No.888 独立 不羈(ふき、東縛を受けない)がストレリチアの生き方

 植物にも色々な生き方があります。ツル植物のように、からまる相手がいないと困るもの、稲や麦のように、お互いに寄りかかれる集団が向いているもの、そして、周囲に邪魔者を寄せるのを嫌う独立組まであります。南アフリカ イーストロンドンの郊外フラーズベイの海岸には、見渡す限りの広い砂浜にそれぞれが何十 mも離れれてレギーネが孤立して散在しています。せいぜい10株ほどですが、お互いが寄り集まろうとしていないのです。

 ストレリチアは独立して、他の植物から離れて生きるのを望む植物です。レギーネの最大の自生地、プルートの谷へゆく途中にエッカ パスという名の峠の小道があります。ここにもわずかなストレリチアの自生が見られますが、いかにもあわれなのです。背の低い、密に茂ったブッシュの中で葉だけを出しているのです。とても、好んで生きているようには見えません。どのような事情で、そうなったのかは分りませんが、ストレリチアらしい生き方にはみえません。

 ストレリチアは四方、どこからみても同じに見える独立した姿が普通なのです。日光をさえぎるものがない状態でなければならないからです。このため、鉢植えでは置く場所を選び、地植えでは他の植物との間隔が大切です。ストレリチアの栽培にあたっては、ここまでの配慮があれば完璧でしょう。ストレリチアが生きるには、その生き方に添ってやらなければならないのです。

 蛇足な話ですが、私の住んでいる町の特産はビワです。この植物は「陰」と呼ばれるほど強い日光を避けたがります。強風に弱いからです。このために園地は皆、防風林に囲まれています。強い風に当ると果実がすれて傷つき、品質を落としてしまうのを避ける意味もあるのです。環境の好みがストレリチアとは全く逆なのです。フラーズ ベイのレギーネは強い潮風を受けて傷だらけになりながらも、たくましい姿を見せてくれていました。