私は7回にわたってストレリチアの自生地を巡ってきました。その都度、必ず、気をつけて小さな苗を探し回りましたが、出会えたのは、わずか2,3本の10cm足らずの小苗だけでした。それ以上の中苗、中株に至っては見たこともありません。それほど若い世代が生きるには厳しい環境なのでしょう。運良く生きられる年が巡ってくるのを待つしかないらしいのです。私としては、自生地でのストレリチアの一生のサイクルを見たかったのですが、残念ながら叶いませんでした。
ストレリチアとて植物ですから、いくら寿命が長いとはいえ、時には世代の交代はあるはずですが、その間隔は人間の想像を遙かに越えて数十年、或いは数百年に一度くらいのものではないでしょうか。これでは私たち人間は立ち会うことは出来ません。
私は育種家ですから、毎年のように種子を採り、何百本もの新しいストレリチアの生命を生み出しています。でも、それは人工だから出来ることで、自然の自生地では新しい原種は滅多なこととでは誕生できないような顔をしたのにのです。
私のところでは、初花の開花で品質の選別が厳しく行いますが、自生地で生まれるのは、そんな生やさしい確率ではありません。「希少」といってもよいでしょう。
私は改めて生き残ってくれているストレリチア原種に敬意を捧げます。
