ストレリチア秘話No.492ストレリチアだってピンからキリまであります

 私の所へはストレリチアに関しての質問や相談がよくきます。その内容も、栽培技術に関しての質問で、私も真剣に答えなければなら高度なものから、笑って済ませるレベルまで、さまざまです。数日前、一人の女性から、問い合わせががあり、「最近、移り住んだ住宅の庭にストレリチアが植えられていますが、買い手がいるでしょうか」

とのことでした。私は、

「そのような品の買い手がいるとは考えられません」

 と、簡単に答えて済ませてしまいましたが、後になって、もっと、くわしく説明すれば良かった、と思いました。でも、その人はストレリチアそのものにではなく、お金に換えることしか関心がなかったのだからしかたない、と、今では思い直しています。

 一般の人々は、ストレリチアとは、「十把、ひとからげ」で、皆、同じ、と考えるのが大部分ですが、実は「千差万別」「ピンからキリまで」の差があります。簡単に言えば、そうそう買えない高価な品から、タダでも、もらい手が無い品、までの広がりがあるのです。この判定は容易ではありませんが、手軽に済ます方法もあります。それは、名品とされるものは滅多に無く、やたらには出回りませんから、この電話の主のストレリチアは99%の確率で普通品以下と見て差し支えありません。

 近頃、ストレリチアの庭へ地植えが広まりつつあります。それは可能なことが分かってきたからです。初期の頃の冒険的な実験のおかげです。でも、それが危険な事であることを知らずに平気でやった場合もあることでしょう。そのような場合、名品が材料に使われるとは考えられません。枯れてしまっても惜しくない品が使われるのです。電話の主のストレリチアは早い頃、植えられたものでしょうから、その品のレベルが見当がつくのです。

 私の仕事は、言葉を変えれば「ピンのストレリチア」つまり、名品を生み出すことにありますから、それが滅多には出来ないことが、よく分かっています。それなりの努力がなければ名品に出会えないほど少ないのです。「出会い」でさえ、そうなのです。手に入れる事は、また、別の問題です。